鉄道車両業界の振動試験事例
鉄道車両で振動試験が重要な理由
鉄道車両には、動力源は異なるものの、自動車や航空機・ロケット同様、振動を伴って動作する部品が搭載されています。走行中は常に振動による負荷を受け続けます。よって、部品はこれらの振動に耐えうるものでなくてはなりません。
自動車や航空機・ロケットと同じように走行中の部品の故障・破損は大事故につながってしまう恐れがあり、大きな振動を受け続けると乗り心地も悪くなってしまいます。このため、JISなどの規格で振動に関する評価基準が定められており、一定の評価基準をクリアした車両のみが運行を許可されているという現状があります。
このような理由により、鉄道車両では振動試験が重要視されています。
鉄道車両の振動試験事例
JIS E 4031(IEC61373)による大型鉄道車両用品の試験事例
- 試験目的:JIS E 4031:2013(IEC 61373 Edition2.0)に基づいた振動試験(ランダム波)・衝撃試験を実施するため。
- 対象品:VVVF インバータ装置、W2140×L2800×H675mm、約1350kg
- 試験条件:適用規格、試験条件は以下のとおり。
【適用規格】JIS E 4031:2013区分1等級A(又はIEC 61373 Edition2.0)
【試験条件】上下、前後、左右方向をそれぞれ次の順序で試験を行った。
1. 伝達関数試験(初期測定):伝達関数、コヒーレンスを測定
2. 振動耐久試験:各方向 5時間
4. 振動機能試験:各方向10分(供試品を動作させて性能を確認)
5. 伝達関数試験(最終測定):伝達関数、コヒーレンスを測定。
大型6自由振動試験による大型鉄道車両用品の試験事例
- 試験目的:JIE 4031附属書JA 正弦波振動試験方法により試験を実施する。
- 対象品:VVVFインバータ装置 W800×L2800×H675mm 約500kg
- 試験条件:適用規格、試験条件は以下のとおり。
【適用規格】JIS E 4031:2013 附属書JA 2種B種
【試験条件】上下、前後、左右方向をそれぞれ次の順序で試験を行った。
1. 共振試験:1~5Hz 10mmp-p 5~30Hz 9.8m/s2p-p 対数掃引1往復
2. 振動耐久試験:10Hz 3.5mmp-p 上下4時間 左右2時間 前後2時間
自社テストセンターへ導入?それとも受託試験?
鉄道車両の振動試験では、大掛かりな装置が必要になることも多く、試験の種類が増えると設備やスペースを確保するのに多額の費用が必要になるという問題が発生します。また、鉄道車両は運行に際して、指定の規格に準じているものしか許可されないという側面もあるため、試験や規格に精通している技術者も必要です。
設備や試験担当の技術者がそろっている場合は自社で対応できますが、コスト面の問題などで設備やスペースを確保できなかったり、試験担当の技術者が不足したりしている場合は受託試験を検討してみるのがおすすめです。