地震の力を算定する際に行うのが、時刻歴応答解析です。ここでは、時刻歴応答解析の特徴や手法などを詳しくまとめています。
時刻歴応答解析では、建物や機械の振動挙動を予測することができます。振動変位を抽出することで、地震などによる振動対策が可能になります。通常の構造計算と違う点は、超高層ビルや免震の建物に対する地震の力を解析できることです。
近年建てられ始めた構造の建物はデータの蓄積が少なく、通常の構造計算では解析の対象外となっています。そのため、建物ごとに検証を行う必要があります。時刻歴応答解析を用いれば、変化する地震の揺れを与えながら、建物の揺れを計算することが可能です。
超高層ビルなどの建物を質量・減衰・ばねでモデル化し、地動加速度を与えて建物の各階の応答加速度と速度、変位を計算します。地震の揺れを正確にシミュレーションできることもあり、建築基準法でも高さ60mを超える超高層建物等の計算には時刻歴応答解析を用いることが定められています。
通常の構造解析の場合はある大きさの単純な力を想定するのに対して、時刻歴応答解析ではリアルな地震でのシミュレーションを実現できます。実際の地震の力は一定の力ではなく、大きかったり小さかったりするものです。そこで時刻歴応答解析では波状の力を仮定して、建物の耐久性をシミュレーションしていきます。
時刻歴応答解析では、地面の揺れとそれに伴う建物の揺れを複数のパターンで計算を繰り返し、解析を行います。建物の振動は、加速度・速度・変位によって表します。加速度・速度・変位に応じて建物に生じる力と、地面の揺れで建物に生じる力の釣り合いを解くことで、建物の状態を把握することが可能です。
建物の揺れ幅や揺れのスピードは、地震波と建物の相互応答によって決まるものです。これを解析するのが、時刻歴応答解析となっています。
建物には、時刻歴応答解析が必要なものと必要でないものがあります。ここでは、時刻歴応答解析な建物を3つ紹介します。
高さが60mを超える超高層ビルは、建築基準法でも時刻歴応答解析を用いることが決められています。超高層ビルは建てられ始めてからの歴が浅いものの、時刻応答解析による検証によって、大きな地震でも構造の安全性部分に問題は生じませんでした。
しかし、超高層ビルは揺れが収まりにくく、高層ビル特有の現象が起きることがあります。万が一、超高層ビルが倒壊すれば周辺に大きな影響を与えることもあり、時刻歴応答解析による検証が必要であるといえます。
建物の下に免震層を持つ免震建物も、時刻歴応答解析が必要な建物です。免震建物の構造は柔らかい層で地震の揺れを逃し、耐震性を高めています。そのため、横からゆっくりと押すという計算では、変化が大きくなるだけで性能の評価ができません。そのため、時刻歴応答解析で性能を評価する必要があります。
ただし、近年は免震建物が一般化されてきているため、小規模で一定の条件を満たす建物であれば、時刻歴応答解析が必要ないケースもあります。
制振建物とは、制震ダンパーを備えて建物の振動のエネルギーを吸収する建物です。制震ダンパーの中には速度が生じなければ効果の評価が難しいものもあり、時刻歴う応答解析で動的な検証を行う必要があります。
制振ダンパーを採用しているのは超高層ビルがほとんどなので、時刻歴応答解析の計算の手間は変わりません。しかし、中低層建物でも制振ダンパーを取り込んだ設計をする場合は、計算の手間がかかります。