音や光など、身近なものの表現にも使われる周波数に基づいて観察する「周波数応答解析」について解説します。
周波数応答解析とは、周波数ごとに動的応答を分析する解析手法です。物体の挙動を時間領域から周波数領域に変換して、動的応答を解析します。周波数応答解析を行うと、周波数・振幅・位相を調べることができます。
周波数を指定して荷重の負荷を繰り返すことで、応答を把握して解析します。定常的な振動は、周波数・振幅・位相の要素から成り立っているため、一定の周波数及び振幅で揺れ続けると、安定した振動状態ということになります。解析時間はかかりますが、効率的に計算することも可能です。
一般的には、自動車や機械、パワートレインシステムから発生する騒音振動の解析に周波数応答解析が利用されます。
周波数応答解析とモーダル解析の違いは、揺れの大きさなどを評価できるかできないかです。周波数解析の場合、外力を負荷して揺れを確認します。そのため、揺れの大きさなども評価することが可能です。モーダル解析で求められるのは、あくまでも共振しそうな周波数です。実際の振動応答については、周波数応答解析でより現実的な結果を取得できます。
一方でモーダル解析は加振力を考慮しないため、周波数とモード形状だけの確認ができます。周波数応答解析で得られる周波数の情報は、任意に指定することが可能です。
周波数応答解析では、周波数分析の結果を予測できますが、周波数だけを知りたいのならモーダル解析で分かります。
周波数応答解析で求められる振幅には、物理的な意味があります。絶対値としても評価できる解析結果であり、モーダル解析では出力できません。
周波数応答解析では振幅を求めることができますが、この振幅が実物と同じ振幅になることは意味しません。振幅は減衰次第で変わるため、解析時には適切な減衰を設定し、部品間の結合のモデル化を考慮するなど、さまざまな技法が必要になります。
周波数応答解析は、指定した周波数で荷重の負荷を繰り返した場合の応答を把握するために行われる手法であり、自動車やトランスミッション、回転機械など、騒音振動の解析に行われます。
何かしらの振動対策を行った場合の結果を確認したり、構造全体の振動挙動を把握したり、共振時の構造物の振り幅とその発生する応力について評価することが可能です。振動対策としては、制振材などを追加したり、質量などを変えて固有振動数を変化させる方法があります。
解析の計算コストを抑え、効率的に解析する手法が「モード重ね合わせ法」です。ここからは、モード重ね合わせ法とフル法について、詳しく解説します。
モード重ね合わせ法とは、モーダル解析で求めた固有ベクトルを係数倍し、足し合わせて解析する手法です。モード重ね合わせ法では先にモーダル解析を行うため、系の特性を想像しやすいのが特徴です。
モード重ね合わせ法では効率的に解析結果を得ることができ、計算コストの軽減を図ることが可能です。ただし、モード重ね合わせ法は複雑なモードでは精度に影響する可能性があります。その場合は、別の手法を用いて解析するケースもあります。
フル法は、モード重ね合わせ法と比べると計算コストがかかります。多自由度系の連立方程式を計算するためコストはアップしますが、高い精度の解析を得ることが可能です。粘弾性材料などの解析の場合、フル法が必要です。