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ハイスピードカメラを活用した振動試験

振動試験におけるハイスピードカメラの重要性は大きく、製品の信頼性向上に不可欠です。また、活用することで振動の細かな分析を可能にします。詳しくは本文で解説しています。ここでは、ハイスピードカメラを活用する目的と事例もあわせて解説します。

振動試験にハイスピードカメラを活用する目的

振動試験は、製品が実際の使用環境で経験する振動を模擬して行われます。ハイスピードカメラを使用することで、試験の精度を大幅に向上させ、より確実な製品評価を可能にします。

ハイスピードカメラを使う目的は、具体的に以下の4つが考えられます。

  • ・目視で確認できない振動の可視化
  • ・さまざまな数値の計測
  • ・データの可視化
  • ・部品同士の干渉確認

目視で確認できない振動の可視化

ハイスピードカメラは、目視では捉えられない高速で動く物体の動きを捉えることができます。振動試験中、製品に発生する高速の振動を記録し、低速で再生することで、製品がどのように振動するのかを正確に分析できます。これにより、予期せぬ弱点や問題点を発見する手助けとなります。

さまざまな数値の計測

ハイスピードカメラから得られる映像データは、単なる視覚的情報にとどまりません。専用の解析ソフトウェアを使用することで振動の振幅、周波数、加速度など、さまざまな数値を正確に計測することが可能です。製品設計の改善や耐久性、安全性の向上に寄与します。

データの可視化

ハイスピードカメラによって出力されたデータにより、解析と共有が可能となります。そのため、設計段階や品質保証において問題点を迅速に特定し、効果的な解決策を立案できます。可視化されたデータは製品のパフォーマンスを評価し、将来の設計改善にも役立てられます。

部品同士の干渉確認

製品内の部品が高速で動作する際、予期せぬ干渉が発生することがあります。ハイスピードカメラは、微細な干渉を捉えることができ、部品の損傷や性能低下の原因を特定します。特に複雑な機械や装置において、部品同士が起こす干渉の確認は、安全かつ信頼性の高い製品開発に不可欠です。

ハイスピードカメラが活用された振動試験の事例

シナノケンシ株式会社の事例

シナノケンシ株式会社では、ハイスピードカメラを活用した振動試験方法を導入し、オートバイの走行テストにおけるサスペンションの性能評価を行いました。具体的には「プレクスロガー」の製品を使用し、オートバイが段差を通過する際のサスペンションの伸縮量を高精度で計測しました。

ハイスピードカメラの魅力

ハイスピードカメラは、高速で動く物体の瞬間をスローモーションで明確に捉えられる特殊なカメラです。従来のビデオカメラの撮影速度(30fps程度)では記録できない高速現象を、数百fpsから数万fps以上という高いフレームレートで撮影できます。

こうした特性により、製造ラインの不具合解析や、科学実験での粒子・液体挙動観察、スポーツフォームの詳細分析、さらにはエンターテインメント映像など、多種多様な分野で必要とされています。

ハイスピードカメラの重要性

撮影対象が高速で動くほど、人の目はその瞬間の動きを正確に把握できません。ハイスピードカメラを用いることで、通常のビデオカメラでは見逃してしまう一瞬の変化が映像として残り、原因解析や新しい知見の発見につながります。例えば、製造ラインでは不具合の瞬間を捉えてトラブルの根本原因を早期に突き止められますし、研究現場やスポーツ分野では肉眼では検知できない高速挙動を見える化し、細かな動きやメカニズムを解明できます。

フレームレート・解像度・感度

フレームレート

ハイスピードカメラの性能を語るうえで代表的なのが「フレームレート」です。1秒あたりに撮影できるコマ数を示す指標で、fps(Frames per Second)の単位で表されます。通常のビデオカメラでは30~60fpsが一般的ですが、ハイスピードカメラの場合、数百fpsから数万fps、場合によっては数百万fpsを超えるものまであります。

フレームレートが高いほど、スロー再生したときに滑らかな映像になります。例えば製造ラインで高速に動く部品が飛び跳ねるような不具合を起こす場合、フレームレートが低いと不具合の瞬間が記録されない可能性があります。しかしフレームレートを高くすれば、コマ送りで原因を特定しやすくなります。

ただし、フレームレートを上げるほど撮影中に得られる光量は短い露光時間になるため不足しがちですし、膨大なデータ量を扱わなければなりません。必要以上にフレームレートを高くするとコストがかさむだけでなく、映像が暗くなる、ストレージの負荷が大きいなどの問題も生まれます。用途に合わせて適切なフレームレートを選ぶことが大切です。

解像度

「解像度」は、撮影した映像の細かさ(画素数)を示します。一般的な表記例としては「1920×1080(フルHD)」や「1280×1024」などがあります。解像度が高いほど細部まで捉えることができ、映像解析の正確性も上がります。

ただし、ハイスピードカメラの世界では「高解像度」と「高フレームレート」がトレードオフになりやすい点に注意が必要です。例えばフルHDで撮影できるとしても、フレームレートは数百fps程度に制限される場合があります。逆に数万fpsレベルの超高速撮影を行いたいときは、解像度を640×480などに落とさざるを得ないケースが多いです。どの程度の画質を確保しながら、どれくらいの高速撮影が必要かを事前に整理すると選定しやすくなります。

感度

「感度」はカメラが光をどれだけ効率よく取り込めるかを示す指標で、一般的にはISO感度で表されます。ハイスピードカメラは露光時間が極端に短い撮影が多いため、光量不足になりやすいです。この時、感度が高いカメラほど少ない光でも明るい画像を得られますが、ノイズの増加も起こりやすいというトレードオフがあります。

モノクロセンサーのほうがカラーセンサーより光をロスしづらいぶん、感度が高くなりやすいです。その代わり色の情報が得られないため、用途によってはモノクロでも充分か、あるいはカラーで撮りたいかを検討する必要があります。例えば製造ラインのトラブル原因を明るく撮れれば充分であればモノクロを選ぶことが多く、映像制作や色の変化を追う実験ならカラーが必要になります。

三要素の総合的なバランス

フレームレート・解像度・感度の3つはハイスピードカメラ選定の「三大要素」です。いずれも高いほど理想的ですが、実際にはカメラやレンズ、照明などの制約で両立が難しく、コスト面とのバランスも考えなければなりません。

例えば5000fpsほどの撮影が必要で、解像度は720pでも構わないし、照明の追加も可能……といった場合と、研究室で狭い空間で撮影するため強い照明が置けない場合とでは、選ぶべきカメラが異なります。まずは「三大要素」のうち優先度が高いのは何かを明確にし、次に他の要素を折り合いつけていくと選びやすくなります。

レンズ・シャッター・インターフェース

レンズ(マウント)

ハイスピードカメラで撮影するにあたって、レンズの選択は極めて重要です。どれほど高性能なセンサーを搭載しても、レンズの明るさや画角、マウント規格が合わなければ想定する撮影が難しくなります。

  • Cマウント
    小型カメラによく使われる。特に産業用や研究向けのハイスピードカメラで採用されやすい。レンズ選択肢も幅広いです。
  • Fマウント(Nikon)
    高性能レンズが多数あり、光学性能が高いことで人気があります。シャープな描写にこだわる場合によく選ばれます。
  • EFマウント(Canon)
    電子制御でオートフォーカスなどが使える可能性があるため、映像制作や産業用途での採用事例も多いです。
  • PLマウント
    映画撮影用シネマレンズのマウント。高品質な映像が求められる映像業界で重宝されています。

また、レンズはF値が小さいほど明るく撮影できますが、被写界深度が浅くなりやすいため、ピント合わせがシビアになる点にも注意が必要です。広角・望遠のいずれを多用するか、マクロ撮影を行うかといった現場の要件を踏まえ、適切なレンズを選びましょう。

シャッターの種類

大きく分けると、ハイスピードカメラのシャッター方式には「グローバルシャッター」と「ローリングシャッター」があります。

  • グローバルシャッター
    センサー内の全画素が同時に露光するため、動体歪み(ローリング歪み)が発生しにくいです。高速被写体の撮影に有利ですが、カメラ自体が高価になりがちです。
  • ローリングシャッター
    センサーの行(ライン)ごとに露光タイミングをずらして読み出す方式です。比較的低コストですが、高速で動く被写体では画面が歪んだりブレたりする場合があります。

高速現象を正確に捉えたい場合はグローバルシャッターを重視するのが一般的ですが、コストとの兼ね合いもあり、ローリングシャッターが選ばれるケースもあります。用途や撮影スピードを考慮し、どちらのシャッター方式が自分のニーズに合うかを確認してください。

接続インターフェース

撮影した映像をPCなどに転送する方法として、以下のようなインターフェースが代表的です。

  • イーサネット(GigE、10GigEなど)
    産業用カメラでよく使われます。長距離伝送が可能で、複数台のカメラをネットワークで一括管理するのにも適しています。
  • USB(USB3.0、USB3.1など)
    手軽に接続でき、PC側の準備も容易です。高いバージョンであれば転送速度もなかなかですが、膨大なデータを扱う場合は帯域に注意が必要です。
  • Camera Link
    かつては産業用カメラで主流でしたが、現在はGigEやUSB Visionなど一般的な規格が進化し採用が減っています。ただし低遅延や専用ボード使用による高速性を活かす場面もあります。
  • HDMI/SDI
    映像をディスプレイやレコーダーに出力する際に使われることが多いですが、撮影後のデータ管理には別の方法を用いるのが一般的です。

ハイスピード撮影は1秒あたり数百MB、またはそれ以上のデータが発生する場合も珍しくありません。インターフェースの通信速度はカメラの性能を最大限活かすために重要な要素です。カメラ自体に大容量メモリやSSDを内蔵し、撮影後にゆっくり転送するタイプもあるので、撮影スタイルに合った方法を選びましょう。

プロトコルからサイズまで

プロトコル

カメラとPCをつなぐインターフェースに加え、その上位で動作する「プロトコル」も大切です。例えばGigE VisionやUSB3 Visionなど、国際規格に則ったプロトコルを使えば、市販のソフトウェアやライブラリで容易にカメラ制御・映像取得が行えます。独自SDKを使う場合は、カメラメーカーが提供する専用ツールを利用することで最適化されたスピードや機能を得られる半面、他社製のソフトとの互換性が限定されることもあります。

画像処理回路

ハイスピードカメラでは、センサーから読み出されたデータをリアルタイムで処理するために、FPGAやASIC、DSPなどのハードウェアアクセラレータを搭載しているものが多いです。

  • ASIC
    高速・低電力で動作しますが、一度設計すると後から機能変更は難しいです。
  • FPGA
    ある程度柔軟にプログラミング可能なため、ファームウェアのアップデートで機能追加ができるケースがあります。速度はASICほどではなくても、高速処理に十分対応できる製品が増えています。
  • DSP
    デジタル信号処理に特化したプロセッサで、コストパフォーマンスに優れた選択肢になる場合があります。

どれを採用しているかはカメラの特長に大きく関わるため、リアルタイム処理やカメラ内での圧縮・解析などを重視する場合、チェックしてみてください。

振動試験機の基礎知識をチェック

ハイスピードカメラの活用は、振動試験の精度と信頼性を向上させるツールとなります。目視で確認できない製品の振動を正確に捉え、問題点を早期に特定することが可能になります。さらに、解析ソフトウェアを通じて得られる詳細なデータは、製品の性能や安全性の向上に直結します。振動試験機の基礎知識もチェックしながら、ハイスピードカメラを活用していきましょう。

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