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ガス腐食試験

ガス腐食試験とは?

使用時に想定される大気環境を作り出して、腐食性ガス環境下における製品の耐久性を確かめる試験です。主に、電子部品を動作させたときに接続部や接触部がうける腐食ガスの影響を評価するため行われています。例えば、車載電子機器などを対象に実施することが考えられます。ガス腐食試験を行うメリットは、電子機器の品質や信頼性を確かめられることです。

試験可能なガスの種類は、サービス提供会社などで異なります。具体的には、硫化水素ガス(H2S)・二酸化硫黄ガス(SO2)・二酸化窒素ガス(NO2)・塩素ガス(Cl2)、これらの混合ガス・オゾン(O3)・アンモニアガス(NH3)などの試験が可能です。

一部のサービス提供会社は、大型ガス腐食試験を行っています。大型ガス腐食試験は、名称の通り大型の部品をそのままの状態で試験する方法です。切断や分解を必要としない点が魅力といえるでしょう。例えば、インバーターやエアコンなどを試験機に設置してガス腐食検査を行うことができます。もちろん、小型の部品を複数設置してガス腐食試験を行うことも可能です。効率を重視したいときに適している試験方法といえるかもしれません。

ガス腐食試験の試験事例

プリント基板のガス腐食試験

引用元:OKIエンジニアリング(https://www.oeg.co.jp/Rel/Gascorrosion.html)

  • 試験目的:硫化水素ガス(H2S)から受ける影響を調べた試験。
  • 対象品:プリント基板
  • 試験結果:基盤下層部のNi-Pメッキが腐食した。また、多数のピンホールと表面の腐食生成物も確認された。腐食生成物は、ピンホールを介して発生したものと考えられる。異物はNi硫酸化合物、Ni酸化物と推定されている。

コネクタに対するガス腐食試験

  • 試験目的:低濃度の硫化水素ガス(H2S)環境で使用されるコネクタの接触不良の原因を解析すること。
  • 対象品:コネクタ(リン青銅・金メッキ)
  • 試験結果:生成した腐食皮膜を観察し被膜の成長を確認。接触不良の原因が腐食皮膜の成長であることを突き止める。

はんだメッキの腐食ガス性評価

  • 試験の目的:亜鉛を使用しないはんだを実現するため、検討中のメッキの耐腐食ガス性と従来のメッキの耐腐食ガス性を比較すること。
  • 対象品:数種類のメッキ(Sn-Ag・Sn-Bi・Sn-Pb・Sn-Cuなど)
  • 試験結果:硫化水素ガス(H2S)にさらされることで、Sn-Agメッキは表面の明確な変色、Sn-Cuメッキは表面のわずかな変色が確認された。一方で、二酸化硫黄ガス(SO2)では、Sn-Agメッキを除き大きな変色は起きなかった。Sn-Agメッキの変色も、硫化水素ガス(H2S)にさらされたときほどではなかった。Sn-Biメッキ・Sn-Pbメッキはどちらのガスでも変色はほとんど確認されていない。濡れ性変化は、Sn-Agメッキ・Sn-Cuメッキでわずかに劣る結果が得られたが大きな問題になるほどではなかった。

プリント基板が腐食する原因

経年劣化

プリント基板の故障原因として多いのが経年劣化です。使用年数を重ねると、基板そのものというより、実装されている部品が寿命を迎えて動作不良を起こすケースが増えます。特に電解コンデンサなどの蓄電部品は、充電回数や使用環境によって劣化が早まる傾向があります。スマートフォンの充電容量が徐々に減るのも、この劣化が大きな要因です。

ただし、充電中の高負荷を避けるなど簡単な工夫で、部品の寿命をやや延ばすことは可能です。加えて、高温多湿を避けるなど、使用環境を整えるだけでも耐用年数は変わってきます。日頃の管理が、経年劣化を遅らせる重要なカギになります。

誤った使用方法

誤った使用方法による故障も大きな原因です。たとえば、水や湿気の多い場所での使用は、基板上のゴミや埃と合わさって電流漏れを引き起こし、ショートやICの故障につながります。濡れた手で操作したり、雨の中で通話したりすることでもトラブルを招く可能性があります。水自体というより、混じっている不純物が基板内部で悪さをする点が要注意です。

万が一、水に強い基板が必要な場合は、コーティング処理を施すことである程度の防御効果を得られます。また、ユーザーに誤った扱いをしないよう周知することで、故障リスクを減らせます。普段から使用環境を見直すことが大切です。

過電圧が生じる

過電圧もプリント基板の故障を引き起こします。電源を切らずにプラグを抜き差しすると、基板内部で通常を超える電圧と電流が流れ、トランジスタやICが壊れる恐れがあります。これらの部品には許容電圧や電流が定められており、急激な変動に弱い点が特徴です。

抵抗やコンデンサなど比較的丈夫な部品も、何度も高負荷を受けるうちに破損リスクが高まります。急ぎの作業でも、電源は確実にオフにしてから抜き差しすることが基本ルールです。回路にサージ吸収部品を追加する方法もありますが、まずは正しい手順を守るだけで過電圧トラブルを減らせます。ちょっとした意識で故障の多くを回避できます。

基板腐食

基板に使われる金属部分が腐食して故障するケースも見逃せません。腐食とは、金属が湿気や汚れなどと反応して酸化や錆びを引き起こし、形状や導電性が変化する現象です。プリント基板の銅箔パターンも、長時間湿気にさらされることで劣化し、回路が断線状態になります。

これを防ぐには、ソルダーレジストで保護したり、保管時の湿度を低く保つことが効果的です。さらに、素手で触ると皮脂や汗が付着し、腐食を促進させる恐れがあるため注意が必要です。長期保管する際は、乾燥剤や密封容器を活用し、劣化を防止しましょう。日頃の管理が基板の寿命を大きく左右します。

静電気破壊

静電気もプリント基板の大きな敵です。帯電した静電気が放電される際、瞬間的に高い電流が流れてICチップを損傷することがあります。目に見えないだけに対策がおろそかになりがちですが、作業環境や設計でアースを確保し、不要な帯電を抑えることが重要です。運搬や保管の際も、帯電防止袋や導電マットなどを使うとリスクを下げられます。

乾燥した環境では摩擦が起きやすく静電気が溜まりやすいため、適度な湿度管理も効果的です。わずかな放電でも部品が壊れる可能性があるため、常に注意を払いましょう。定期点検や除電装置の導入など、多面的な対策が求められます。

湿度管理

水分が原因で基板が壊れる可能性がある点を踏まえ、業者によっては湿度管理室を使用し、プリント基板を常時40%以下の湿度で保管されます。湿度に特に弱い部品は湿度1~2%のドライボックスに入れて、腐食や錆の発生を防いでいます。スマートフォンに用いられる半導体やLEDなどの部品は、水分による劣化リスクが高い傾向があるため、こうした管理が欠かせません。

また、高湿度のまま放置したり、汗の付いた手で直接触れたりすると、部品劣化が加速するため注意が必要です。長期にわたって基板を安定動作させるには、徹底した湿度管理が大切になります。

運搬方法の工夫

組み付けが完了したプリント基板を運搬するときにも、衝撃や静電気から守る対策が重要です。業者の中には緩衝材で梱包するだけでなく、帯電防止加工が施された赤や青の緩衝材を使用し、摩擦などによる帯電を防ぐところもあります。

また、一度に複数台の基板を納品する場合、仕切りを組んだ集合梱包箱でサイズに合わせて固定し、輸送中の揺れや衝突リスクを抑えています。こうした方法を採ることで、受け取り後すぐに基板を取り出せる利点もあり、次の工程に効率よく進める点が評価されています。大切な基板を守るには、梱包や運搬の細部まで対策を施すことが肝心です。

環境試験はトータルで対応できる会社へ

環境に対する部品や部材、装置などへの耐性はさまざまな角度から評価する必要があるので、環境試験も一つの対象品に対して、さまざまな種類の試験を実施しなければなりません。よって、受託試験をお願いする際は、対応幅が広い会社へお願いしましょう。当サイトでおすすめする振動試験受託サービス業者2社の対応範囲を掲載しますので、ぜひ参考にしてください。