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超音波疲労試験とは?振動試験との違いについて解説

超音波疲労試験について

このページでは、超音波疲労試験の特徴と、振動試験・耐久試験との違いについても紹介しています。

疲労試験とは

超音波疲労試験の前に、まずは「疲労試験」について紹介します。

疲労試験とは、試験用の材料や素材の小片(試験片)に、さまざまな方法で繰り返し荷重を加え続け、対象物が破壊に至る限界点を調べて記録するための試験です。金属材料などの継続的な負荷に対する寿命を把握することを目的としたもので、別の名を「疲れ試験」といいます。大きな負荷を一気に加えるのではなく、継続的に繰り返し行うのがポイントです。

例えば、金属材料は硬くて丈夫なため、決して壊れないと思われがちですが、実際には小さな負荷でも何回も受けることによって、ダメージが積み重なってやがては破壊に至ります。その破壊に至る限界点は、荷重を何回受けることで達するのか、寿命に至るのか…それを知るためのテストが疲労試験です。

ちなみに、建物や機械が壊れる原因の多くは、使用中に繰り返しの負荷を受けたことによる「疲労破壊」だとといわれています。この一点においても、疲労試験を実施することの重要性がよくわかります。

超音波疲労試験の特徴

超音波疲労試験とは、読んで字のごとく、超音波を使って試験片の疲労限度を把握する試験です。ジェットエンジンやガスタービンなど、ギガレベル(10の9乗回)の高速振動によるサイクル疲労特性を評価する目的で行われています。

一般的な油圧式サーボ疲労試験機や回転曲げ疲労試験機等でも疲労試験を実施できますが、ギガサイクル領域の疲労試験では、最大でも約30~100Hzの試験速度を出すのが限界であり、疲労強度評価を下すまでに多大な時間を要していました。

この点、超音波式の試験機なら、20kHzの周波数を出せるため、10の7乗回以上の超高サイクル疲労試験が可能になります。簡単な話、ジェットエンジンやガスタービンなど超高サイクル疲労試験の場合でも、スピーディーに検査を行い試験時間を短縮できるのです。

ただし、超音波疲労試験の注意点として、試験の際に材料自体が発熱することを留意する必要があります。すなわち、分析では熱の影響を考慮しなければなりません。

疲労試験と耐久試験の違いは?

疲労試験と似ているものに耐久試験というのがあります。耐久試験も試験片や実部品に繰り返し負荷を加えてテストする動的試験という点では、疲労試験と同じですが、違うところもあります。

相違点の一つは、繰り返し負荷する試験の目的です。疲労試験では対象物が「壊れる」ことを前提に、疲労破壊の限界点を把握する目的で行いますが、耐久試験では対象物が「壊れない」ことを前提に、規定の負荷を与えて耐久性を確認することを目的としています。

また、試験の結果、得られる情報量にも違います。疲労試験の場合は対象物が壊れるまでテストするため、疲労破壊の原因やプロセスなどさまざまな情報が得られますが、規定の負荷しか与えない耐久試験では、疲労試験と比べて得られるデータが少ないです。

超音波疲労試験と振動試験の違い

製造業に欠かせない評価方法としては、振動試験というのもあります。振動試験は、対象物の耐久性・信頼性・性能を評価するための試験です。実際の使用環境を作り出し、その中で製品に振動を与えて亀裂や破損、摩耗、摩擦といった影響を観察します。

使用環境を再現する方法には、縦振動や横振動、サイン波、矩形波、ランダム振動など複数のパターンがあります。いずれであっても、実際に使用される環境下で振動の影響をテストするのが振動試験です。

一方、超音波疲労試験は、対象物に20kHzというギガレベル(107回以上)の超音波振動を与えて疲労特性を評価する試験です。一般的な振動試験ではギガサイクルの振動を与えることはできませんが、超音波式を導入することで超高負荷速度を実現できます。

超音波疲労試験に主に調べられるものは?

超音波疲労試験の対象は、疲労破壊が起きるまで非常に時間がかかるものです。例えば、設備や機械系では、機械構造物やインフラ設備、航空機部品などが対象になります。また材料系では、高強度鋼・ジュラルミン・チタン合金・アルミといった、20kHzで共振することができ、なおかつ共振時に発熱の少ない材料です。一方、樹脂やセラミックなど20kHzで共振できない材料は試験負荷となります。

振動試験で主に調べられるものは?

振動試験で調べられるものは、建築・輸送・電子機器・工業製品一般にまで広く及んでいます。自動車、航空宇宙、電子部品、防衛機器、原子力、鉄道車両用品、建築、石油、ガス機器、工業用生産機器、生産ライン、段ボール梱包、輸送梱包など多種多様です。パソコンなどコンピューターやスマートフォンも調べられます。振動試験の種類も、振動耐久試験から輸送梱包試験、生産ラインの検査、地震対策の試験、振動解析・計測など多彩です。

素材・部品から適した試験を選ぼう

超音波疲労試験は、超音波を用いたギガサイクル領域での試験に適していますが、素材や部品によって向いているもの、向いていないものがあります。このことを踏まえ、試験を実施するときは、素材・部品に適した試験を選びましょう。超音波疲労試験以外にもさまざまな振動試験や環境試験があるので、チェックしてみてください。