振動試験にはいくつか種類があり、そのうちの一つがユンカー振動試験です。本記事では、ユンカー振動試験の特徴や原理などを紹介します。
ユンカー振動試験とは、ボルト締結体に関する振動試験のことをいいます。ボルト締結の耐振動性を検証するために行われるものです。次のような特徴があります。
ユンカー振動試験は、ドイツ工業規格DIN65151に準拠した振動試験です。現在、ボルトやナットの締結力を検証する試験といえば、今回紹介しているユンカー振動試験か、米国航空規格に則ったNAS式振動試験の2つが挙げられます。
ボルトやネジがゆるんでしまう原因の一つとして挙げられるのが、振動や衝撃が加わることによって発生する戻り回転によるものです。ドイツの工学博士であるユンカー氏がこの戻り回転のメカニズムに関する論文を発表し、ドイツ自動車エンジニア協会の認定を受けています。
その後、論文に記載されていた方法と装置で振動試験が行われることになったため、ユンカー振動試験またはユンカー式振動試験と呼ばれるようになりました。
ユンカー振動試験は、厳しい状況下でボルト締結体を検査するのが特徴です。そのため、ユンカー振動試験をクリアしたものは高い締結軸力が実証されているといえるでしょう。
実際にネジやボルトなどが使用されている現場では、さまざまな振動が日常的に発生しています。これがゆるみに繋がってしまうのですが、ユンカー振動試験では軸力低下を招きやすい軸直角方向の振動を発生させることによってどの程度でゆるんでしまうのか観察・検証が可能です。
ユンカー振動試験は、軸直角振動を与える試験です。試験機をロードセルと呼ばれるセンサーに接続して試験を行います。測定できるのは、締結物を締め付ける際に加えられた力量と、軸力です。
ボルトに潤滑剤を塗布してから試験機にセットします。続いてナットをセットして締付け、試験開始です。どの程度ゆるんだのか簡単に目視できるように、開始前にマーキングを行います。
せん断方向の振動を繰り返し与えてその間の軸力の変化を調べます。異なる振幅で試験を行うと、より正確なゆるみ試験が可能です。
振動によってどの程度を軸力が失われてしまうのか調べられるだけではなく、どの時点で完全に軸力が失われてしまうのか特定するのにも役立つ試験です。
国際規格であるISO16130では、試験後の残存軸力が100~85%であった場合はゆるみ止め機能良好、85~40%であった場合はゆるみ止め効果許容可能、40%以下はゆるみ止め特性が劣っていると評価されます。(※1)
ユンカー振動試験は、ネジのゆるみの評価などに使用されるとても厳しい試験です。ゆるみ防止の性能を強化したいと考えているものはユンカー振動試験を行うと良いでしょう。
振動試験機に関して、他にもおさえておきたいポイントがいくつかあります。以下のページでは振動試験・振動試験機の基礎知識を紹介しているので、こちらもぜひ参考にしてみてください。