振動試験を行う上でおさえておきたいのが「PSD」や「ESD」と呼ばれる指標です。それぞれの特徴を紹介します。
PSDとは「Power Spectral Density-Function」の頭文字を取ったものであり、パワースペクトル密度関数のことをいいます。周波数ごとのエネルギー分布を示すものです。
主にPSDが用いられるのはランダム振動試験です。一般的にランダム振動試験ではPSDを設定した上で試験を実施することになります。
ランダム振動試験は製品などに対してランダムな振動を一定期間与え続けることにより、どの程度機能が劣化するか、どこまで負荷に耐えられるかを調べるためのものです。
ここでいう「ランダムな振動」には様々なものがありますが、その条件を定義するために必要になるのがPSDです。
ランダム振動試験では複数の周波数を合成することでランダムな振動を作ります。この各周波数の強さを定義するのがPSDであり、周波数毎に強弱をつけることで複雑な振動波による試験が可能になります。
実際に試験を行う際には、振動試験機にPSDを入力します。ランダム振動のPSDに関しては一般的な輸送を想定した数字がJIS Z 0232などに記載されているので、こちらも参考にしてみると良いでしょう。
また、より詳細にランダム振動試験を行いたいと考えているのであれば、実際の輸送時に測定された加速度の時間波形をフーリエ変換する方法もあります。複雑な計算が必要となることから、周波数分析機能のほか、時間軸領域、振幅軸領域での解析機能などができるFFTアナライザなどの計算装置を活用すると良いでしょう。
まず、センサーや計測機器などを用いて加速度波形を測定します。例えば、トラック輸送を想定している製品の場合、トラックに加速度センサーを取り付けて実際に走行し、データを収集する形です。
加速度波形のデータが収集できたらそれをフーリエ変換させてPSDを作成しましょう。この、PSDに基づく形でランダム振動試験を行うと、実際にトラック輸送されている時と同等の振動を与えて試験できることになります。
振動試験におけるESDとは「Energy Spectral Density-Function(エネルギースペクトル密度関数)」の頭文字を取ったものです。
単位周波数毎のエネルギー分布のことを指しています。
ESDがよく使用されるのは、ショック波形のように過渡的な信号のエネルギー分布を求めるためのシーンです。
自社で振動試験機を購入して振動試験を行っていきたいと考えているのであれば、今回紹介したPSDやESDなどについてよく確認しておいた方が良いでしょう。専門的な知識が必要となりますが、正しく振動試験を行うためにもおさえておきたいポイントです。
また、振動試験の受託サービスを利用しようと考えている場合も試験に関する基本的な知識は身につけておくことをおすすめします。以下のページでは、振動試験や振動試験機に関する基礎知識を紹介しています。こちらもぜひ参考にしてみてください。