振動試験のMIL規格
MILとは
MIL規格はMilitary Specification and Standardsの略でアメリカ国防総省が定めた規格で、アメリカ軍の調達資材に関して、過酷な環境下でも問題なく使用できる品質基準が定められています。
武器だけでなく生活必需品や電化製品など、適用用途は多岐にわたります。よって、用いられている業界も幅広く、JIS規格同様、身の回りのあらゆるものが対象になるといっても過言ではありません。
振動試験の対象物となるのは、一般機械・電子機器及び電気機械・自動車の分野における部品・製品、物流分野の運搬物が多くなっています。
他規格との違い
他の国際規格ではIEC規格、ISO規格などがあります。IEC規格は電気・電子に関する技術における標準化を目的とした国際規格、ISO規格は電気・電子以外の分野に関する標準化を目的とした国際規格です。他によく用いられる規格としては、JIS規格、NAS規格などがあります。
JIS規格はJapanese Industrial Standards(日本産業規格)の略で、日本の産業製品に関する規格や測定法などが定められた日本の国家規格です。NAS規格は国際航空宇宙規格(National Aerospace Standard)の略で、航空宇宙産業の業界で使用される規格です。
MILの振動試験事例
MIL-STD-202G振動試験事例
- 試験目的:MIL-STD-202Gに基づいた試験を実施。
- 対象品:電子機器(基板)
- 試験条件:参照規格、試験条件は以下のとおり。
【参照規格】MIL-STD-202G
【試験条件】ランダム振動試験(MIL-STD-202G METHOD 214A Condition 1-H、要求PSDで3分×3軸)
MIL-STD-810G振動試験事例
- 試験目的:MIL-STD-810Gに基づいた試験を実施。
- 対象品:無線機器(数kg程度)
- 試験条件:参照規格、試験条件は以下のとおり。
【参照規格】MIL-STD-810G
【試験条件】1.ランダム振動試験(MIL-STD-810G METHOD 514.6E Figure 514.6E-1、要求PSDで1時間×3軸)
2.衝撃試験(MIL-STD-810 METHOD 516.6 Table 516.6-Ⅱ)
Sawtooth 40g 11msec(要求波形)各方向±3回(計18回)
輸送試験の試験事例
- 試験目的:輸出用ダンボール包装、走行距離2000kmのトラック輸送を想定した振動試験を行う。
- 対象品:1000mm×800mm×H600mm、100kg
- 試験条件:参照規格、試験条件は以下のとおり。
【参照規格】MIL-STD-810F(Method 514.5 Annex A 2.2.1 Category 4 a. Truck transportation over U. S. highways. )
【試験条件】特別な防振装置をつけない限り2.5Hz以下に固有振動数があることはないと判断し、時間を節約するため、試験では2.5Hzまで伸ばすことにし、応答測定を省略した。
対象品の垂直方向には垂直方向のPSDを適用する(この大きさの貨物では、輸送時に貨物の上下方向の指定は守られると判断)。
車両の前後左右方向に対する貨物の向きを指定しない。貨物の水平の2方向には、ともに前後方向PSDを適用した。対象品はベルトで固定する。加振時間は各軸75分とする( = 60min×2000km/1609km)。