振動試験装置を設置するときは、騒音問題について考えておく必要があります。振動試験装置を稼働させると、振動発生機から床や建屋など建物内部に振動が伝達し、大きな騒音が発生する場合があります。とりわけ、電車のガード下の騒音に相当する100dB(デジベル)を超える場合は相当な騒音が発生しますので、社内の環境を保護するため、防振・防音対策が必要です。では、具体的にどのような振動試験機の防振・防音対策ができるのでしょうか。
振動試験機の防振・防音対策は、機器設置の際に防音機構や防振機構を搭載することによって実現します。設置の仕方には、床直置き、リーンエアー方式(ボディサスペンション方式)、防振空気バネ方式、浮き基礎方式などがあります。リーンエアー方式では、ボディサスペンションの導入により振動を吸収できます。同様に防振空気バネ方式でも、装置の下に防振空気バネを取り付けることで振動が吸収されます。浮き基礎方式でも、ベースメントに振動吸収材を施工することで振動の大幅削減が可能です。その他さまざまな防音機構・防振機構の搭載により振動試験機の防振・防音ができます。
振動試験機の設置に際しての騒音対策としては、振動試験機用の防音カバーを付ける方法もあります。全体を鋼板やアルミで覆った箱形の形状が特徴で、中に機器を設置して防音しながら振動試験ができる文字通りの防音カバーです。
大きな振動が発生する機器に対する防音対策としては、鋼板を用いたものが一般的ですが、より高い利便性を得る方法としてはアルミを用いた防音カバーが有効です。
アルミ製の防音カバーは防音・防振性だけでなく、加工性にも優れているため、現場の状況に合わせた防音カバーのカスタマイズが可能になります。防振効果を高めるためのアンカー用のアングルの設置や、配管用の穴をあけるといった作業も、鋼板と比べると施工がしやすいのです。
いずれにしても振動試験機の防振・防音対策として、防音カバーを使用する方法もあることを覚えておいてください。
振動試験機の設置に際しては、さまざまな注意点があります。ここでは、振動試験機を扱う上で気をつけたいポイントを紹介します。
試験装置の設置に際しては、付帯設備の有害物質に留意する必要があります。試験装置自体は無害でも、各種の付帯設備にフロン、オイル、窒素ガスといった人体に有害な物質を有する場合があります。
有害物質の人体への危険、有害性に関しては「窒素ガス」の例が挙げられます。窒素は大気中に多く含まれる元素ですが、人間が吸入すると、初期症状としては顔面蒼白や紅潮、脈拍と呼吸数の増加、めまい、息苦しさ等があり、末期症状としては意識不明、けいれん、心臓停止等が起こり死亡する危険もあります。
また窒素は高圧ガス容器に充填して供給されるため、高圧ガスとしての危険性があり、容器から噴出したガスが目に入った場合、網膜を損傷したり、失明したりする恐れもあります。ただし、窒素は不燃性ガスのため、環境への影響はありません。
振動試験機を床に設置して稼働する場合、床に伝わる振動の影響を考慮しなければなりません。特に低周波数の場合は顕著です。低周波は防振・防音が難しく、一般的な対策を講じても十分な防振ができない可能性があります。伝播する振動が大きくなれば、それだけ騒音も大きくなっていきますので、低周波数の防振対策が十分でない場合、共振による過大振動の誘発や周囲の施設を損傷してしまうおそれもあります。振動伝播を防ぐため、十分な振動伝播防止対策が必要です。
振動試験機の冷却ファンのホースを延長する場合は注意が必要です。延長により加振機がオーバーヒートしてしまい、発火による火災の可能性もあります。また同様の理由により、ホースの急角度な設置も避けるべきでしょう。
振動試験装置の近くに他の装置がある場合も注意が必要です。振動試験装置と他装置が近接することで、振動伝播や電気的ノイズが発生する可能性があります。特に電気的ノイズは他の設備に影響を与えたり妨害したりする可能性があるため要警戒です。
振動試験機を安全かつ最適な形で使用するためには、以下の3点に留意してください。
振動試験装置の選定では、供試品による加振力への影響を考慮する必要があります。そのため、試験に要する加振力が装置の最大加振力の80%以下になる装置を選定しましょう。試験装置への供試品の搭載方法は、供試品の重心位置が試験装置の可動部の中心にくるよう搭載するのが理想です。中心から離れるほど、荷重芯が偏心する偏心ムーメントが発生しやすくなります。最後にカタログ値というのは、メーカーが公表している仕様書に記載された数値です。実力値=実測値ではないことに留意してください。